越後長野温泉「嵐渓荘」

日本秘湯の会というのを知ったのはいつ頃であったのか。あちこちでそのロゴが書かれた提灯のある宿屋があったことは知ってはいた。そうとは知らずにこの宿を選んだ。雪の中で温泉をつかりたかったからなのだ。行ってはじめて秘湯の会であることを知る。
関越道からの路面はほとんど雪がなく、宿に近づくにしたがいに路面が氷になってくる。道のまわりには白い壁ができている。雪国の除雪はどこに行っても素晴らしい。道はどんどん沢沿いにのぼり、その壁はますます高くなっていく。その終わりにある一軒宿が今晩の宿泊地だ。
なぜか駐車場が異様に広く、雪は少ない。建物は古く、貫禄がある。木造三階建てで現役だ。こういった建物に泊まるれるのも温泉の楽しみだろう。ひろい庭もあるようだが雪でよくわからない。駐車場以外はすべて白銀だ。
三階の角部屋に通される。よく暖房が効いた部屋は古いがこぎれいな部屋で、内廊下が庭に向かってぐるりとあり、明かり障子で部屋を覆う。もちろん中には浴室も便所もない。が、十畳が二つもある。したがって今日の宿泊所は二十畳ということになる。いい木工装飾をされた良質の部屋だ。大げさではあるが工芸品の部屋ともいえる。木造三階建ての欠点である防音や、振動、きしみはなぜか少ない。構造材がしっかりしているのだろう。あるいは屋根からの雪の重みもあったのかもしれない。
湯はまあそれなり。ただ良かったのは貸し切り露天の休憩室で、暖炉とBOSEのオーディオシステムがあったこと。眼前の雪景色を眺めながらのモダンジャズは素晴らしい。思わずギムレットを頼みたくなってしまった。
この宿はすべての水を沢水を使用していることで、良くも悪くも独特。山奥なので水道水がないことは分かるが、、、、、
翌朝は大雪だった。朝風呂は当然雪の中で至福の時をもつ。だれもがずっと入っていたいと思うだろう。しかし、クルマは冷凍庫に入っているのである。が、この宿の従業員は素晴らしい。総出で雪かきをして、クルマから道からすべてが昨日のままである。もちろんこんこんと雪がふっている中で。

ここは、テーマパークとしての温泉宿としては楽しいものがあるし、それなりの企業努力を感じるところである。

越後長野温泉「嵐渓荘」
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