長野 犀北館

どの町にも昔から古い宿屋があった。連綿と続く歴史の中で、さまざまなことがおき、消えていき、あるいは興隆し、あるいは伝説となっていったのだろう。古い町ほどそうだ。 善光寺の出自はよくわからない。日本に仏教が輸入される最初期の頃には宗派がなく、…

京都国際ホテル

京都の宿はどこがいいのだろうと毎回思ってしまう。河原町辺りの中心地にはホテルは少ないし、広めのホテルは中心地から離れてしまう、といったジレンマのある地区の一つ。 このホテルは微妙な位置にある。二条城の東脇。地下鉄東西線「二条城前」の地上口の…

ホテルグランビア京都

JTBという旅行業者がある。正式には株式会社。かつては交通公社と呼ばれ、準国営企業だった。この公社の出発は国策によった。南満州鉄道や鉄道省、帝国ホテルといった国有組織が出資して作っている。目的は新大陸への日本国民の移動のため。もう少し正確に言…

雲見温泉「又五郎」

福永武彦に「海市」という小説があった。蜃気楼を見にいく絵描きが雲見で素晴らしい女性と出会うというところから話は始まる。海市とは蜃気楼のことである。かつては絵描きがよく出かけたところが雲見でもある。 さらにその昔は秘境であり、陸路からの接近は…

番外編 松本「ホテルアルモニービアン」

温泉ではないので番外編となる。 古い町にある古い建物を使ってできた新しい瀟洒な宿舎。こじゃれたホテル。松本城に向かう大通りにある。元の銀行の建物をそのまま使う。かつての銀行のロビーは結婚式場になっている。天井が高く居心地がいい。音が「よくひ…

八塩温泉「神水館」

昔は格式のある旅館だったのだろう。リニューアルしたとはいえ、太いケヤキの柱が構造材になっており、聞けば庭の対岸も借景のために旅館で購入してあるそうだ。ちなみにここは群馬と埼玉の県境である。川の向こうの借景は埼玉県になる。クルマではきやすい…

番外編 「ホテル日航新潟」

佐渡は最大の流刑地だ。流人はいつ帰れるかも分からずその島での最低の階級を過ごす。多くの政治犯が過ごしている。その佐渡にわたるには佐渡汽船を使う。その発着場の脇にある高層ビルが今日の宿屋だ。新しく気持ちがよい。高層階と頼んだが、角の広い部屋…

番外編 新潟「ホテルオークラ」

近年の日本の町はなんか寂しい。店を閉じてしまう商店街がその町の中央にあったりする。県庁所在地の町でもそういった光景が見られる。 新潟は元気だ。夜の町も魅力的だ。ホテルも老舗や大型のものがいくつかあり選ぶ楽しみもある。 つい使ってしまうのが「…

国民宿舎「両神荘」

秩父は奥が深い。かつての武州であり、明治期には秩父事件という内乱を起こしたところでもある。武州は八王子から大宮辺りまでの広い地域を示した。もちろん親藩である。そのような歴史が未だに続いていることを感じさせる地域である。こういった地域歴史と…

東京染井温泉「SAKURA」

巣鴨は最後の将軍慶喜が蟄居したところ。日本鉄道豊島線の開通時に巣鴨駅の敷地を提供したと聞く。が、騒音がいやで茗荷谷に転居する。そのあとを岩崎家が貰い受けいまでも三菱系列の施設が多い。ここもその流れだそうだ。 そんなところに温泉をつくった。さ…

番外 浪漫の宿

渡辺華山(華の字は正しくは山かんむり、以下同じ)は今の文京区に去来した。藩主が若くして蟄居し文京区に住む。そこに華山が通い蛮社の獄がおこる。となりが鳥居耀蔵の下屋敷だった。華山の自宅はいまの三宅坂。藩主の名前が三宅だったのでその名前が地名…

越後長野温泉「嵐渓荘」

日本秘湯の会というのを知ったのはいつ頃であったのか。あちこちでそのロゴが書かれた提灯のある宿屋があったことは知ってはいた。そうとは知らずにこの宿を選んだ。雪の中で温泉をつかりたかったからなのだ。行ってはじめて秘湯の会であることを知る。 関越…

泉崎さつき温泉 「泉崎カントリービレッジ」

インターネットがわれわれの生活を大きく変えたものは数多くあるが、旅行にかんしては多大な恩恵を拝受しているといっていい。とくにスマートフォンの普及は大きい。移動中に掛け流しの宿泊先を探し、情報を得、映像で確認し、予約することができる。 そうや…

新甲子温泉 「みやま荘」

源泉湯宿を守る会というのがある。秘湯の会よりも硬派な気がする。なぜなら源泉を持つ宿屋のみだから当然厳選されていると思われるから。福島の白河に良質のそばを供する店がある。もちろん手打ちなのだが、つまみ系も充実しておりやはり行くのは夜にしたい…

増富ラジウム温泉「不老閣」

この二年で放射能にかんする考え方が変わってしまったのが日本の特に東に住む人の特徴だろう。放射能は病気に効く、といった考え方は昔からあった。放射能元素の名前を冠した温泉は各地に散見される。ではそれがどんなになったんだろうか、というのが今回の…

湯村温泉「甲府富士屋ホテル」

富士屋ホテルは国際興業傘下になって大きく発展した。海外にも支店を多く作りさしあたっては成功したのだろう。 しかし温泉があるホテルは少ない。本店の塔ノ沢と、芦ノ湖と、いくつもない。ただ、元会長だった小佐野氏のお膝もとに作られたのがこのホテルだ…

「藤岡温泉ホテル」

群馬はいいところだ。奥ゆかしく、知的であり、食もいい。そして何と言っても良質の温泉が多い。さらに首都圏からも近い。一昨年の311以来首都圏からの食材購入のための人が多くなっているという。まあそれはよく分かる。顔の見られる食材を買いたいと思うよ…

釈迦の冷泉

温泉は宗教的なところがある。信じるか信じないかは各自の勝手、ということで。かつては湯治と言って多くの不治の病気は長く温泉につかり、回復を待った。だから本当に効くか効かないかがわかった。ただ、多くの病気は治らなかったのだろう。今日では多くの…

奥秩父 柴原温泉 「かやの家」

秩父のポピー畑で、たまたまクルマの調子が悪くなってしまった。JAFを呼んでも地元のクルマ屋のおじさんが来るばかり。軽のレンタカーを貸すからそれに乗れという。すごくいいおじさんだったけど、私のクルマはそんなことでは治らないはずなのでそれとなくお…

秩父小鹿野温泉 「梁山泊」

スマートフォンはなかなか便利だ。私たちのように行き先を決めずに移動するものにとってきわめて便利なものだ。かつてはクルマを公衆電話の前で止めて、電話帳から今日の宿屋を捜したものだ。そういった紙媒体が払底され、瞬時に今日の宿屋が決定されるよう…

新見温泉 「新見本館」

倶知安に用事があった。秘湯の会のサイトで見つけた温泉。倶知安からクルマで小一時間ほどの距離にある。まったくの自然の中にある一軒宿屋だ。湯量は大量で完全掛け流し。そのうえ露天まである。露天は男女混合になっていて内湯ともつながっている。女性一…

番外編 酒田 「最上屋旅館」

ここは温泉ではない。だが記しておきたく、載せてしまう。 酒田の歴史は古い。大前船が行き来をした頃多いに賑わった。一時は久保田(現 秋田)や新潟よりも大きな町であった。東北戦争でずいぶんとその流れが変わってしまった。東北の悲劇はひとえに明治政…

花咲温泉 「よしや荘」

源泉掛け流しということで予約。藤岡インターから一時間は走ったのだろうか。途中で立ちより湯も入るがこれがなかなかよかった。いずれ宿泊したいと思う。 さて、花咲温泉。かつて武尊山に行ったことはあるものの、なぜか記憶になく不思議に思っていたところ…

清津峡 湯元温泉 「清津館」

大晦日に宿泊した。深い雪を予想していたのだが、路面はほとんどアスファルト。除雪が頻繁におこなわれているのだろう。かつては秘境であった清津峡も田中角栄先生のおかげで来やすくなったものだ。 軽量鉄骨三階建ての旅館。湯はPH9.8で化粧品会社も注目し…

湯宿温泉「大滝屋旅館」

群馬は温泉レベルが高い。それもそのはずで首都圏から近く火山も多い、また県民意識も高いのではと密かに思っている。優秀なものが近くに多くあると全体のレベルが上がっていくものなのだ。文化とはそういうもの。 そんな中、評判の高い湯宿温泉「大滝屋旅館…

箱根「山のホテル」

温泉といえば箱根。箱根といえば芦ノ湖。芦ノ湖といえば「山のホテル」。ということで「山のホテル」へ。 箱根の開発は古く主要街道の江戸への一関門であった。したがって多くの遺跡が残っている。と同時に温泉地としても古くから有名で、医療機関がなかった…

奥多摩町川井「松乃温泉 水香園」

奥多摩は青梅線で東京からの日帰り圏でもあり、観光開発がされ尽くされた観があるが、いまのところ長瀞のように廃墟観光地にはならずにいるのはたいしたもの。各経営者の自助努力によるものだろう。ただ、往年のような観光客ラッシュといった状況になってい…

中禅寺湖 「金谷ホテル」

金谷旅館は江戸期からの老舗である。明治期に入り率先して外国人を日光に招く運動をしている。箱根の富士屋ホテルとは姻戚関係にあったと聞く。見たこともない「毛唐」を招き入れる好奇心の強さが実業を成功させたのだろう。前述のイザベラ・バードもここに…

諏訪温泉 「紅屋ホテル」

中央道を使って東京への帰り道、日が暮れてきて急遽泊まった宿。従前から噂は聞いていたので迷わずに決める。遅めの予約だったので夕食なし。知っている鰻屋に直行する。近年の日本の鰻屋のたれのレベルは向上したのではなかろうか。かつては地方の蕎麦汁や…

富士見高原 「八峰園 鹿の湯」

八ヶ岳が好きだ。クルマで程よい距離で、空気がさわやか、一年を通じ居心地が良い。 ついここに泊まってしまう。第三セクターで作られた宿屋さん。従業員は役人のはずなのだが妙に人懐っこい。スキー場も併設してあり、冬はそちらの方が忙しくなる。公共の保…